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Table 1. Impacts due to construction of the offshore man−made island

も、適度な静穏性は二枚貝の幼生や稚魚、プランクトンの集積にはプラスに作用するし、養殖・増殖場としての利用も可能である。さらには内湾特有の干潟が形成される可能性もある。しかしながら、沿岸方向の長さに対して離岸距離が短すぎる場合など過度に静穏性を高めると、シルト堆積域が広がり、従来の砂浜に適した貝類の生長を阻害したり、水質、底質の悪化を招く恐れもある。
また、人工島を建設すれば背後域は静穏で高波浪時でも防災上有効であるが、長い海岸線の砂浜に人工島を建設すると背後の静穏域に向かう海浜循環流に起因して必ず大規模かつ顕著な海浜変形が引き起こされる。せっかくの静穏域が顕著な堆積によって有効に利用されず、周辺海浜には侵食域が広がるようでは人工島建設はマイナスである。したがって、新たに創成される広大な静穏海域の防災上、開発・利用上、生物環境上のプラス面ばかりに目を奪われず、海浜変形や生物環境面のマイナス面にも十分注意を払い、必要な対策を予め講じた上でバランスの良い計画を立てる必要がある。
3. 海城の物理環境への影響
沿岸方向長さ1.5km、幅0.4km(60ha)の人工島を海底勾配1/100の海浜に汀線から0.8km離して建設した場合を想定して、?人工島背後域の静穏度、?生物の生息条件からみた静穏度、?海浜変形の3つの観点から検討した。人工島背後域には顕著な堆積が生じると予想されるため、人工島背後域を有効に利用するという観点から海浜安定化方策の一つとして、人工島の両端の岸側の水深4m地点に長さ400mの離岸堤を2基設置した場合についても検討した。
3.1 海域の静穏度
数値シミュレーションにより人工島背後の波高分布を評価し、人工島背後に創成される海域静穏度を評価した。計算には、人工島による回折や地形による屈折など現地の波浪変形を精度良く計算できる放物型方程式に基づく

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Fig. 1 Calculation area and bottom topography

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Fig. 2 Spatial distribution of wave height ratio

方法(磯部、1986)1)を用いた。
計算領域は図−1に示す通り、沿岸方向4km、岸沖方向2.5kmで、格子間隔は50mである。計算は有義波周期10sとし、波向は人工島および汀線に対して直角入射とした。波浪条件は大平洋北東部をモデルとし、鹿島港の波浪条件を参考に用いた。
有義波高4m、有義波周期10sのケースの波高比分布の計算結果を図−2に示す。人工島のみ設置した場合も、

Table2. Percentage of the tranquil area behind the island

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